イマドキ!授業

新藤先生にインタビューしました

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新藤先生にインタビュー

新藤先生のゼミはどんなゼミなのかを皆さんに知ってもらうために、オンラインでたくさんの質問をしました。

群馬大学 共同教育学部 学校教育講座
准教授 新藤 慶(しんどう けい)
プロフィール
北海道大学教育学部卒業後、同大学院教育学研究科博士後期課程修了(博士(教育学))。
新見公立短期大学幼児教育学科講師を経て、2011年2月より現職。
研究分野

教育社会学、地域社会学、エスニシティ研究
好きなもの、趣味

乗り物(飛行機、鉄道、車など)で移動すること
ゼミ(研究室)とは何を学ぶ場ですか?
ゼミ(研究室)は自分で学ぶ力をつける場であると考えています。学術的な研究についてだけでなく、日常生活でも必要とされるような学び方を学ぶことができます。
新藤先生の研究では、どのような研究を行っているのですか?
今の4年生については、3人の学生の指導を受け持っています。「教員の多忙化に対する対策」「若者の進路選択と地域移動」「放課後児童クラブと放課後子ども教室の一体化をめぐる動き」などのテーマの研究を行っています。
ゼミ(研究室)ではどのような形式で学んでいくのですか?
3年次にゼミ(研究室)に入り、関心のある事柄について先行研究を読んで勉強していきます。4年生からはテーマを絞り、テーマに関連する先行研究や政策動向、基礎の調査データを調べます。研究の進め方は人それぞれですが、アンケートやインタビューなどを実施しながら卒業論文を完成させていくことになります。
ゼミ(研究室)で指導していく上で、新藤先生が大切にしていることは何ですか?
私が専門にしている教育社会学の性格にもよるのですが、物事を考える際に、思い込みや自分の経験だけで判断するのではなく、事実・エビデンスなどの客観的なデータに基づいて考える癖をつけていくことを大切にしています。
  • 先住民族のサーミの人たちで構成される議会
    先住民族のサーミの人たちで構成される議会
  • スウェーデンに調査に行った際の写真
    スウェーデンに調査に行った際の写真
これからゼミ(研究室)に入る学生に対して、伝えたいことがありましたら、教えてください。
自分が興味のあることを追及できるゼミ(研究室)を選んでもらえたらなと思います。「どうすべきか」を考えていくためにも、「どうなっているのか」という実態を把握することが大切だと考えています。そういったことに関心がある学生は教育社会学に向いているのではないかなと思います。テーマは同じであっても、その切り口は色々ありうると思います。私はよく料理に例えるのですが、同じ食材を使っていても、料理の仕方によって最終的に完成する料理は違ってきます。例えば魚を使った料理でも、刺身で食べるのが良いのか、焼き魚や煮魚が良いのかということと同じです。同じ対象についてもアプローチの仕方は色々あります。アプローチの仕方がそれぞれの学問の研究方法ということになるので、自分に合う方法を探してゼミ選びをしてもらえればと思います。
ゼミ(研究室)に入ってから卒業論文制作までの大まかな流れを教えてください。
教育専攻では、3年次の初め(4月ごろ)に研究室紹介と研究室訪問があります。その後、それぞれの先生方と話をし、「自分がどのようなことに興味があるのか」「どういうことができるか」といったことを相談した上で希望を出して、5月半ばごろにはゼミ(研究室)に分かれることになります。ここからはそれぞれのゼミ(研究室)のやり方にもよりますが、新藤研では、3年生では興味のある事柄に関する論文を読んで、何がわかっているのかを把握し、明らかになっていないことやさらに知りたいことを考えていきます。4年生では、自分の調べたいことを決め、先行研究やインタビューなどで調査を行っていきます。他のゼミ(研究室)では、文献研究を行って、テーマに関する重要な理論を勉強することもあります。4年生の前半は就活などで忙しいため、夏休み以降に本格的な研究を行っていくことになります。卒業論文は1月半ばまでに提出、2月に発表という流れになります。
新藤先生が教育社会学に興味を持ったきっかけは何ですか?
最初に興味を持ったのは教育社会学ではなくて社会学でした。私が大学に入学する前の年は色々な事件が起こり、社会的に落ち着かない状況だったので、社会問題などを学問の対象として捉える社会学という学問に関心を持ちました。
私が高校生の頃に流行した「女子高生ブーム」の中に、援助交際というものがありました。お金に困っているから援助交際をするのではなく、どちらかというと裕福な家庭の子たちが援助交際をする現象が注目されていました。若者の行為や文化を社会情勢と結び付けて議論することを社会学者はよくやっていたんです。色々な社会現象や社会の要素を組み合わせて分析する社会学の面白さを感じました。
私自身は、教員養成を目的としない教育学部で学んでいました。2年生の後期から研究室を選ぶんですが、その時に「社会学って面白かったな」と思い、教育学部の中で社会学を勉強できる教育社会学を選んだんです。
これまで研究室で印象深かった出来事はありますか?
学生の皆さん頑張って卒論をまとめられているんですが、特にレベルが高い研究が印象深かったです。
例えば、私が群大に着任して初めて受け持った学生の卒論のテーマに、「子どもの仲間集団の時代の変遷」がありました。よく「今の子は外で遊ばなくなった」や「ガキ大将がいなくなった」と言われたりしますよね。いつ頃どういった感じで変わってきたのかを探る研究です。子どもたちの作文を集めた雑誌の中から優秀作品が載る号を10年おきに調べて、どこの地域の子どもたちがどのような友達関係に基づいて書いているのかについて分析していました。その結果、異年齢集団で遊ぶことは、1960年の時点で都市部でほとんど見られなくなっており、同じ学年の子どもとしか遊んでいないことが分かりました。その上、外遊びをしないことについても、都市部においては比較的早く言われていたことも分かりました。よく勉強している学生でしたね。印象深かったです。
新藤先生が執筆した著書
北欧サーミの復権と現状〈2018年〉
世界的にも権利保障が進んでいるといわれる北欧の先住民族サーミを対象に、政策や生活の実態を調査した本です。このなかで私は、サーミの人々の生活実態や意識についてまとめています。
現代アイヌの生活と地域住民〈2018年〉
北海道に生活拠点があった日本の先住民族アイヌを対象に、政策や生活の実態を調査した本です。このなかで私は、国・北海道・市町村のサーミ政策の展開についてまとめました。
教える・学ぶ教育に何ができるか〈2019年〉
子どもの貧困の問題を、教育の分野から考えようという本です。このなかで私は、「外国につながる子どもの貧困と教育」について書いています。
〈つながり〉の戦後史〈2020年〉
1970年に閉山した尺別炭鉱(北海道釧路市)を対象に、炭鉱閉山が炭鉱労働者やその家族にどのような影響を与えたかを明らかにした本です。炭鉱のつながりが同郷団体として存続する様子を分析しました。
先生と学生で卒論を進めていくメリットはありますか?
私自身がよく知らない分野を取り上げてくれる学生が多いので、そういったことを教えてもらい、学べることが大きなメリットだと思います。論文を一緒に読んだりしますが、自分の関心だけだったら読まない分野だったりするので刺激になります。
新藤先生が考える、教育社会学を研究室で大学生が学ぶ意義を教えてください。
私の研究室で学ぶ教育社会学だけに限らず、「証拠に基づいて問題を考える力」が身に付くことだと思います。
教育に対して、学生はそれまでの自身の経験に基づき、自分なりの考えを持っていると思います。そのため、すぐ「こうすべきだ」という断定的な考えを持ちがちですが、その考えは、その人個人の限られた教育体験でしかありません。全般的な状況や実際のところどうなのかをきちんと考え、確かめることのできる力を身につけることができるのではないかと思っています。
今後新藤先生が力を入れていきたい研究は何ですか?
色々なことに手を出しているんですけど、主にやっているのは、日本に暮らしている、外国につながる子どもの教育です。エスニックマイノリティ、民族的少数派という言い方もしますが、マイノリティの立場とマジョリティの立場をどう結び付けていくのかですね。マイノリティ側から見たときに、どういう風に状況が捉えられるのか、どういう問題を抱えているのかは、なかなかマジョリティ側に伝わらないんです。なので、マイノリティの立場から問題の状況を捉えて、それをマジョリティ側に伝えていきながら、問題の解決に向けた方策を導いていけたらよいと思っています。
特に今は、「外国につながる子どもたちの進路保障」の研究に力を入れています。日本に暮らす外国籍の子どもたちには色々な子たちがいますが、中国国籍の子どもが人数的には一番多いです。中国国籍の子どもたちは、割と親御さんが高階層の方が多いんですね。一方、ブラジルやフィリピンから来ている子どもたちは、親御さんも出稼ぎ目的で来日しているため、仕事も目いっぱいやっていて、ギリギリの生活をしているんです。親御さんも日本語が達者ではないことが多いため、教育達成の面で不利を抱えがちです。教育達成の面で不利を抱えやすい、日本で暮らしている外国籍の人達、特にブラジルやフィリピン、ペルーの子どもたちを対象に、学校や教育委員会に留まらず、NPOなどを対象とした研究を進めていきたいと思っています。
このコーナーの取材を
担当した学生広報大使
共同教育学部教育専攻 2年和田山 愛鈴の写真
共同教育学部
教育専攻 2年
和田山 愛鈴
私自身、ゼミ( 研究室)というものについて知らないことが多かったため、取材できて良かったです。1年生や2年生のゼミ(研究室)選びに役立てばと思います。
教育学部教育専攻 4年 島田 咲羽さんの写真
教育学部教育専攻 4年
島田 咲羽
普段はあまり知ることのできない、研究室において大切にされていることや学生時代のお話を聞くことができ、貴重な経験となりました。この記事を読んで、少しでも群大の研究室について知っていただけたら嬉しいです!
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