iGEM群馬大学チーム代表 北 みずきさんにインタビューしました
プロフィール
iGEM群馬大学チーム 代表
北 みずきKita Mizuki
プロフィール
理工学部3年。神奈川県出身。2019年からiGEM2019のリーダーを務める。座右の銘は「塞翁が馬」。
iGEMとは?
The International Genetically Engineered Machine competitionの略称で、米マサチューセッツ工科大学で毎年開催される合成生物学の大会。“生物版のロボコン”とも。参加チームは、遺伝子組み換え技術などを駆使して、独自の「機能をもった大腸菌」を製作する。大会では各国からの参加者がテーマを決め、優秀な発表には金、銀、銅賞が与えられる。
米ボストン大会で「銅」
iGEM群馬大学チームは2019年に発足し、10月に行われた米ボストン大会では銅賞※を受賞した。代表者の北みずきさん(総合理工学科化学・生物専門教育プログラム3年)がインタビューに応じてくれた。
※「銅賞」は絶対評価であり、今回の大会では群馬大学を含め57チームが銅賞を受賞しました
研究者として「総合力」が身についた
-
聞
- いきなり直球の質問ですが、iGEMの魅力とは何なのでしょうか?
-
北
- 魅力…ハードなことですかね(笑)
-
聞
- ハードなことが魅力なんですか(笑)
-
北
- 研究者としての総合力が身につくと思いますね。プレゼン力、英語力、資金を集めるための行動力などですね。実際、実験しているのは全体の時間の3割~4割。残りは他の人と連絡を取ったり、「どういう価値があって、なぜ助けてほしいのか」を伝えたりする作業が多かったです。それに学生の身分では気付きにくいことですが、「働いている大人からお金を頂く」ことがすごく大変だと感じました。資金面で支援をしてくれた方々の中には、雑談がきっかけとなったこともありました。偶然のつながりも強く感じました。
-
聞
- 確かに人生は何が起こるか分かりませんね。実際のボストン大会ではどのようなことをなさったのですか。
-
北
- 今回は、プレゼン1回とポスター発表2回です。プロジェクトとしては、「特定回数分裂した後に急に死ぬ大腸菌」、つまり時限爆弾のような仕組みを作っていたのですが、時間が足りず実験が途中までしか終わりませんでした。これは悔しかったです。あとは現地で他のチームとの交流や、情報収集にも力を入れました。
-
聞
- 日本以外の国の参加者はどうでしたか?
-
北
- 全く別物です。全てのチームがというわけではありませんが、比べ物にならないぐらい上手かったです。プレゼンの完成度はヨーロッパやアメリカが特別でした。
-
聞
- 具体的にどういう点が違いましたか?
-
北
- アジア勢はいきなり研究の内容から入りがちなのですが、MIT(マサチューセッツ工科大学)などは、発表者がそれぞれ挨拶と名前を言った上で研究内容に触れるんです。それだけでかなり印象が違いました。「もっと聞きたい」という空気になっていたんですよね。プレゼンターが原稿を見ないのはもちろんです。
-
聞
- 凄いですね!
-
北
- ですよね。うちのチームでは「丸暗記はする必要がないのでは」という意見もありましたが、私はそうは思いません。上手いところはやはり全く原稿を見ていなかったし、ベストプレゼン賞をとった台湾の大学は、エンターテイメント形式でゲームマスターのような存在がいたりと、対話形式で進んでいました。
-
聞
- プレゼンの仕方一つでも違いがあり、それによって結果も異なるんですね。
-
北
- そうですね。最も重要なのは実験と結果であることに変わりがないのですが、もっとプレゼンが上手くなる必要があると感じましたし、英語ももっと流暢に話せるべきだと思いました。
-
聞
- ほかに何か新しい発見や得たものはありますか?
-
北
- 期待に応える大切さを知りましたね。MITや他大学の学生を見て、「一流であるためには他人の期待を裏切らないことが大切だ」と感じました。
-
聞
- 他人の期待を裏切らない…難しいことです。
-
北
- ですね。例えば京都大学は今回の大会で着物を着て、タンパク質の形を折り紙で作り、全員が流暢な英語で進めていく。みんなが京都大学に期待していることをやっていたんです。
自分のことを変える勇気
-
聞
- 来年度以降のiGEM群馬大学チームはどうなるとお考えですか?
-
北
- 群馬大学とiGEMはがっつり組み合っていると思います。学習環境だって他大学に比べて優れていますよ。
-
聞
- どのような点で相性がいいのでしょうか。
-
北
- まず授業の質が高いと感じます。基礎学力を重視している大学だと思います。iGEMは環境が良くないとできません。実験場所を確保できることや指導教授がいることはもちろん、大学が応援してくれないと難しいんですよ。
そして何より、メンバーにやる気があって、iGEMに時間を割く時間や労力を捻出できることが大事です。
群馬大学にはiGEMをやるにはピッタリな環境がありますが、学生の主体性、チャレンジ精神が少し控えめなことが惜しいです。学生が自分で自分のことを変える勇気を持ち、目標に向かって行動することができたら、群馬大学全体がもっと魅力的になると思いますよ。
iGEM群馬大学チーム
iGEM は、The International Genetically Engineered Machine competitionという、合成生物学の大規模な国際学生大会のことです。毎年ボストンで開催され、参加チームは、iGEM本部が提供する大腸菌の遺伝子情報ライブラリや遺伝子組み換え技術等を駆使し、目的の機能を発現する独自の「機能をもった大腸菌」を製作します。
2018年度、2019年度共に5000人以上の参加者が独自の機能を持つ大腸菌について研究した成果を発表し、日本からはこれまでに東大、京大、東工大、岐阜大などが参加。群馬大学チームは2019年、初出場しました。
iGEM 群馬大学チームのボストンでの写真
[提供者:iGEM代表(北みずきさん)/ 文:聞叡萌]
集合写真
集合写真(日本からの参加者のみ)
iGEM 群馬大学チームの成績を示す賞状。今回の銅賞は
絶対評価(定められた評価基準に則って評価する手法)による。
後輩の皆さんへメッセージ
1、2年生だけどもう研究室で実験をやりたい方、iGEMで実現しませんか?
iGEM群馬大学チームは今年発足2年目で、全学部から志の高いメンバーを大募集中です!!GFL生かどうかは関係ありません。
iGEMは大腸菌に好きな能力を持たせる遺伝子組換え実験を行い、その結果を発表する国際学生大会です。2019年の参加者は5000人以上、世界中から才能と意欲ある学生が集結しています。合成生物学を勉強して、山ほど実験して、最後はボストンで、英語でプレゼンしましょう。はっきり言って学業との両立はハードですが、すごく楽しいです。クラウドファンディングやWebサイト作り、広報に興味のある方もぜひご連絡ください。
2019年度代表 北 みずきさん
このコーナーの取材を
担当した学生広報大使
理工学部化学・生物化学学科 2年
聞 叡萌
※所属・学年は執筆当時のものです。